. 告発が止まらない映画界の〝性加害〟は「強制わいせつ」や「強制性交」に当たらないのか?
告発が止まらない映画界の〝性加害〟は「強制わいせつ」や「強制性交」に当たらないのか?
告発が止まらない映画界の〝性加害〟は「強制わいせつ」や「強制性交」に当たらないのか?

告発が止まらない映画界の〝性加害〟は「強制わいせつ」や「強制性交」に当たらないのか?

告発が止まらない映画界の〝性加害〟は「強制わいせつ」や「強制性交」に当たらないのか? 中原 慶一 エンタメ

2022年05月09日 10:32

所属事務所の公式サイトに掲載された園子温監督直筆の謝罪文(シオンプロダクション公式サイト http://www.sionproduction.com/)

映画界の〝性加害〟報道が続いている。映画監督の榊(さかき)英雄(51)、俳優の木下ほうか(58)、映画監督の園子温(60)らが立て続けに、被害者女性から週刊誌上で告発された。

発端は3月10日発売の「週刊文春」。榊の作品に出演したり、ワークショップに参加していた4人の女優が、2013年から17年の間に榊からレイプまがいの性的行為を強要されたり、映画の出演を持ちかけられた上で関係を持たされたと告発。同誌ではさらに、別の女性3人による告発が続き、榊への告発は合計7人に上った。

さらに、榊の盟友で名脇役とされる木下ほうかを告発する女性も同誌に登場。木下が演技指導の名目で、若手女優を自宅に呼び出し、「なんでできへんねん」などと怒り、悔しさのあまり泣きだすと「もういいから。こっち来いや」と寝室に連れていき、パンツをおろして、顔の前に性器を突き出して陵辱したと伝えている。

またさらに4月5日発売の「週刊女性」では、「主演女優にはだいたい手を出した」という映画監督の園子温を女優が告発。園は「俺とヤッたら仕事をやる」と豪語し、事務所に呼び出されて性行為を迫った。またシティホテルに呼び出され、「仕事をあげるよ」と言われ無理矢理関係を持たされた別の女優も告発している。

性被害が刑事告訴には至っていない理由とは

榊は謝罪コメントを出し、監督映画「蜜月」や「ハザードランプ」は公開中止。木下は俳優活動を無期限停止。園は騒動への謝罪声明を出したが、「今回の週刊誌報道の記事については事実と異なる点が多く、自分自身以外への関係者にも多くのご迷惑がかかっていることを考慮し、代理人を通じて、しかるべき処置をとって参る所存です」と報道内容について法的処置をとる可能性もあることを示唆している。

しかし、女性たちの告発はいわゆる「♯MeToo運動」に近い週刊誌上での告発が中心で、「強制わいせつ」「強制性交(強姦)」などの刑事告訴には至っていない。この点について刑事事件の対応も多い杉山大介弁護士はこう話す。

「〝犯罪であるか〟と〝性加害であるか〟には微妙に差がある点は踏まえるべきだと思います。監督という上位の立場を利用して性的交渉を求めれば、それは間違いなくハラスメントであり、『性搾取』、『性加害』です。一方で、犯罪となる強制というのは、相手の意思判断を奪っている状態になります。

そのため、今後の関係性を考えしぶしぶ応じているのは、刑法における強制とは少し異なってきます。その上で、中には犯罪にあたるものもあるでしょう。そういう場合、特に裁判に出たくないことや、芸能界における関係性を意識することは、訴え出る障害になっているようです」

いまだ戦々恐々としている関係者も?

強制わいせつ罪や強制性交等罪(強姦罪)は、平成29年7月13日から、親告罪(被害者の告訴を必要とする犯罪)ではなくなっているが、こうした告訴への障害がある限り、泣き寝入りはあるだろう。しかし勇気を持って週刊誌で匿名で告発することは、被害女性の現実的な〝駆け込み寺〟の役割を担っていることも事実である。

「報道が出た後、周辺を取材してみると、榊、木下、園の3人に共通するのは、〝有名な話だった〟という関係者の証言が次々と出てくることです。作品へのキャスティングをチラつかせて関係を強要する話は、映画やドラマの業界では昔からありますが、表に出ていないだけ。戦々恐々としている関係者はまだいると思います」(夕刊紙記者)

一方、3月18日には、映画監督の是枝裕和氏や西川美和氏などが「私たちは映画監督の立場を利用したあらゆる暴力に反対します」との声明を発表した。

「怒りのエンタメ消費」に自覚的であるべき

杉山弁護士は、こうした話が表沙汰になった際は「部外者は謙虚になるべき」としてこう話す。

「被害者に過度な興味を持つことも、断片的な情報で加害者を断罪することも、結局、他人の性被害話を、怒りのエンタメ消費している下劣な行為でしかないと自覚した方が良いと思います。

加害者が被害者を黙らせるために圧力をかけたりした場合は、むしろ外の人間が参加しないと告発は潰されてしまう訳ですが、現状、被害者が被害を訴えれば、それは何でも真実であるとされる状況になっているのも事実です。私は部外者であること、何も知らない立場であることに自覚的でありたいです」

この手のゴシップに興味を持つのは人間の性とも言えるが、真相が分からないのに、興味本位でああだこうだと騒ぎ立てることは好ましくないと杉山弁護士は警鐘を鳴らしている。

取材協力弁護士 杉山 大介 弁護士

所属: ベリーベスト法律事務所 北千住オフィス

  • この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいて執筆しております。
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