川崎病の基礎知識
かわさきびょう 川崎病 小児に起こる全身の血管炎により、発熱・発疹・冠動脈病変など様々な症状を引き起こす 18人の医師がチェック 165回の改訂 最終更新: 2024.12.03 執筆・監修 医療事典 MEDLEY 編集チーム 医師・薬剤師川崎病は、5歳までの乳幼児に多い全身の血管に炎症が起こる疾患です。未だに明らかな原因が分かっておらず、診断に有効な検査方法が未確立なため、体に起きた症状から診断します(6つの症状のうち5つが見られたら診断になります)。 この病気で一番気をつけなければならないのは、心臓に合併症を起こすことがある点です。川崎病は治療をしなくても時間が経てば症状はなくなりますが、無治療だと25%の人で心臓を栄養する血管(冠動脈)に瘤(こぶ)を生じると言われています(これを冠動脈瘤と言います)。こぶが大きいと、後々に心筋梗塞を起こしやすくなってしまいます。 ただし、こぶが出来た後の対処法もありますし、一旦できた冠動脈瘤が時間と共に小さくなり無くなる場合もあります。この冠動脈瘤をいかに予防するかが、川崎病治療の大きな目的です。確実な治療方針が定まっておらず、多くの施設で行われているIVIG(大量免疫グロブリン療法)による初期治療を含めて、さまざまな治療法が存在します。川崎病が疑われる人は必ず小児科を受診してください。
- 全身の血管に炎症が起こり、発熱・発疹・目の充血などの症状を起こす
- 免疫が異常に働き、炎症を起こすと考えられている
- 感染症が関与している可能性は指摘されているが、明らかな原因は不明
- 他人にうつることはないと言われている
- 主に乳幼児(特に3歳未満)の病気であるが、年長児・成人での発症も稀にある
- 我が国では一年に約1万から1万5千人が発症している
- 冠動脈(心臓を栄養する血管)にも炎症を起こし、血管が拡張したりこぶ(冠動脈瘤)を作ることがある:冠動脈病変
- 冠動脈瘤ができると心筋梗塞の危険性が上がる
- 病名は、発見者である川崎富作にちなんだものである
- 小児急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群(mucocutaneous lymphnode syndrome:MCLS)と呼ばれることもある
- 似たような症状を引き起こす病気
- 溶連菌感染症(猩紅熱)
- アデノウイルス感染症
- エルシニア感染症
- ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群
- 麻疹
- 薬物反応
- 全身型若年性特発性関節炎
- EBウイルス感染症
- ヘルパンギーナ
- 手足口病
- 主な症状
下記の6つの症状のうち5つ以上があてはまるか、4つがあてはまり冠動脈瘤がある場合に川崎病と診断される
- 発熱
- 発疹
- 形は様々
- 全身に広がるが、下着やズボンのゴムで圧迫されている部分に多い
- BCG接種部位が赤くなったりかさぶたができたりする(1歳未満の児で多い)
- 眼の充血
- 白眼が真っ赤になる
- 唇や舌が赤く腫れる
- 舌の表面にぶつぶつがみられ「いちご舌」と表現される
- 唇は乾燥して亀裂・出血・かさぶたを伴うこともある
- 首のリンパ節が腫れる
- 痛みを伴うこともある
- 左右両方のことも片方だけのこともある
- 手足の先の特有の症状
- 手足がテカテカ・パンパンに腫れる手のひら・足の裏が赤くなる
- 回復期に手足の指先の皮がむける(膜様落屑)
- 最初から症状が同時に現れることは少なく、3-5日ほどかけて揃ってくることが多い
- 診断基準を満たしてはいないが症状や検査結果などから川崎病が強く疑われる場合、「不全型川崎病」と診断して川崎病に準じた治療を開始することがある
- その際には他の疾患が否定できている必要がある
- 冠動脈病変の他にも心筋炎・心膜炎・弁膜症・不整脈など心臓に関連した合併症を起こす
- その他に、電解質異常・肝機能障害・胆嚢炎・浮腫などを起こす
- 診断は上記の基準に従う:心臓超音波検査・心電図検査は必須
- 心臓超音波検査
- 冠動脈の状態、心臓の動きや弁の様子を適宜評価する
- 心電図検査不整脈の合併などがないか確認する
- 心臓超音波検査
- 以下の検査は診断に必須ではないが、治療方針の参考や他の疾患の除外のために有用である
- 血液検査
- 炎症反応の程度や肝機能・電解質などを調べる
- 尿検査
- 川崎病では尿中に白血球がみられることがある
- 細菌検査
- 感染症があるかどうかを確認する目的で、血液や尿、便中の細菌の有無を確認する
- 溶連菌・アデノウイルスの迅速検査(のどを綿棒でぬぐう検査)
- 血液検査
- 冠動脈病変を伴う場合、心臓カテーテル検査が必要となることもある
川崎病の治療法
- 治療の考え方
- 最大の目的は炎症を抑えて、「冠動脈病変を起こさないようにする」こと
- 症状出現から7日目以内に治療を開始することが望ましい
- 診断がついた時点で原則的に入院が必要となる
- 初期治療
- 免疫グロブリン:IVIG(点滴)
- 異常に働いた免疫を調整し、炎症を抑えると言われている
- 献血で提供された血液の一部を使用する(血漿分画製剤)
- 通常12時間から24時間かけて投与する
- 点滴の量が多くなるため、特に心臓の機能が落ちている子どもには注意が必要である
- アスピリン(内服薬)
- 多めの量を飲むことで炎症を抑える
- 肝機能障害がある場合にはフロベンという薬で代用する
- 免疫グロブリン:IVIG(点滴)
- 免疫グロブリンの投与を終了した後
- 治療効果を約24時間から36時間ほど観察する
- IVIGの治療効果の判定にはKobayashiスコア、Egamiスコア、Sanoスコアなどが用いられる
- 15-20%ほどは治療効果が見られないと考えられている
- 多くの場合は解熱が見られるが十分に効果が得られない場合には以下のような治療を追加する
- 免疫グロブリンの再投与
- ステロイド薬:初期治療時に投与することもある
- メチルプレドニゾロン点滴(ステロイドパルス療法)
- プレドニゾロンの内服
- 免疫抑制剤:インフリキシマブ、シクロスポリンなど
- 血漿交換:機械を使って血液を体の外に出し、血液内の有害な成分を除去する。その後きれいな血液を体に戻す
- 治療効果を約24時間から36時間ほど観察する
- 症状が改善し、冠動脈瘤もなければ自宅での療養が可能となる
- 長期的な経過は冠動脈病変がある場合とない場合で経過は異なる
- 冠動脈病変がない場合
- 熱が下がったあとはアスピリンの量を減らして2-3ヶ月継続する
- 少量を継続することで血小板の働きを抑えて血を固まりにくくする
- 冠動脈病変がないか定期的に心臓超音波検査で確認する(数年間)
- 冠動脈病変がある場合
- 冠動脈病変がなくなるまでアスピリンを継続することが多い
- その他に抗凝固薬・Ca拮抗薬・β遮断薬を追加することもある
- 心臓カテーテルによる治療や外科的治療が必要となることもある
- 心筋梗塞を起こした例では心筋梗塞に対する治療を行う
- 冠動脈病変がない場合
- 退院後の注意点
- アスピリンを飲んでいる間は血が止まりにくいため、大きな怪我に注意する
- 水痘(みずぼうそう)やインフルエンザにかかるとReye(ライ)症候群を発症する危険性がある
- Reye症候群とは突然の意識障害や嘔吐がみられる非常にまれな病気
- 熱が出た場合、アスピリンをいったん中止して医療機関を受診する
- 免疫グロブリン投与後は免疫がつきにくいため、予防接種をしばらく延期する
- 延期する期間の目安は次のとおりである
- 生ワクチン(麻疹・風疹・流行性耳下腺炎:おたふくかぜ・水痘:みずぼうそう・ロタウイルス)は6ヶ月以上あける(例外としてBCGは生ワクチンだが制限なし)
- ワクチンの接種時期に関しては主治医と相談して再設定する
- 不活化ワクチン(5種混合・肺炎球菌・B型肝炎など)については制限なし
- COXという体内の酵素の働きを阻害し血小板凝集を抑え、血栓の形成を抑えて血管をつまらせないようにする薬
- 血小板が凝集すると血液が固まりやすくなり血栓ができやすくなる
- 体内で血小板凝集を促進させるTXA2という物質はCOX(シクロオキシゲナーゼ)という酵素によって生成される
- 本剤はCOXを阻害することでTXA2の生成を抑える作用をあらわす
- 薬剤の中には川崎病の治療などに使用される薬もある
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