№30 想定外
№30 想定外
ベンチでようやく落ち着いたら 誰かがこっちに歩いてきた さっき泣いてしまった
気恥ずかしさで 下を向いていると 「やっぱり君だったのか…」 …え? 忘れるはずが無い
その懐かしい声に反応して
顔を上げる 「あ… あなた…」
そこにいたのは
以前のような優しい表情の夫
「…もう落ち着いた?」
「あ… ご、ごめ…」
咄嗟に謝ろうとしたら 夫が私の横に腰掛けてきた
「駅に着いたら電車の中から 君がホームにいるのが見えて…
まさか、見間違いだよなって…
そう思って
改札まで行ったんだけど…
気になって戻ってきたら 君がホームで泣いてた…」
「あ…」 見られてたんだ… 「ご、ごめんなさい… あなたを見かけてしまって… それで…」 「そうか、君も気付いたんだ… でもどうしてここに?」
「あ… それは…」
ウソついてもしょうがない… 正直に言おう…
私は
お姉ちゃんを偶然見かけたこと、
つい後を追いかけてしまって さらに妹ちゃんも見かけたこと、
気になってしまい この駅まで来たことを話した 「そうだったんだ… その上、俺まで見かけるって すごい偶然だね(笑)」 「あ… はい…」 優しく笑う夫 その姿はまるで昔のようだった
「で、君はどこに住んでるの?」
「今は○○駅のそばなんです…」 「割と近いんだ(笑) 俺たちは先々月に ここに引っ越してきたんだ」
「そうだったんですか…」 すると
次の電車が到着するアナウンス 「もう電車が来ちゃったか…
良かったら少し話さないか? 駅前にカフェがあるからさ」
「え… いいんですか…?」 「いいよ(笑) じゃ、行こうか」 夫は立ち上がると 笑みを浮かべながら私を促す 「あ、はい…」 私も立ち上がると 夫の少し後をついて行く 頭の中はパニックで
何も考えられない
カフェに入ると
夫が私の方を向いて 「ミルクティーで良かった?」 と聞いてきた 「あ… はい!」 覚えててくれたんだ… 私はドリンクはいつも ミルクティーを頼んでいた 覚えてくれていたことに 喜びが隠せず
つい大声で返事をしてしまった
「元気良いなぁ(笑)」 思わず夫も笑ってしまった あ…
笑ってくれた… 夫が私に… 夢じゃないの… 笑顔になった私の目から また大粒の涙が溢れる すると夫がそっと耳打ち
「もう泣かないで…」
慌てて涙を拭って答える 「あ… はい…」 そんな私に 夫は優しい笑顔で小さく頷くと 2人分のドリンクを持ってくれて 奥の席に向かい合わせで座った どうしよう… 夫の顔が見れないよ… 心臓の音が聞こえそうなくらい
私の胸はドキドキしていた
【BACK NUMBER】 遅過ぎた後悔 本気で好きだった 身体を許す時 歪んだ猜疑心
初めての挫折 優しさの罠 好奇心の代償 忘れてた感情
思い上がり 残されたもの 心と身体の正体 因果は巡る
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